1.遺言とは

そもそも遺言とは、自分が生涯をかけて守ってきた大切な財産を、残された親族等に最も有効・有意義に活用してもらうために行なう、遺言者の最終の意思表示です。
世の中には遺言が無いために、相続を巡り親族間で争いの起こることが少なくありません。しかし今まで仲の良かった者が相続を巡って骨肉の争いを起こすことほど悲しいことはありません。
遺言はそのような悲劇を防止するため、遺言者自らが自分の残した財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防止しようとすることに主たる目的があります。そのため、遺言は遺言者の真意を確実に実現させる必要があるので、厳格な方式が定められていて、その方式に従わない遺言はすべて無効です。録音テープやビデオに撮っておいても、それは遺言としては法律上の効力はありません。普通遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの方式が定められていますが、秘密証書遺言は年間100件程度しか作成されず、公正証書遺言の10万件超と比べ一般的ではありませんので、以下自筆証書遺言と公正証書遺言について述べていきます。

2.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が紙に自ら遺言の内容の全文を手書きし、かつ日付、氏名を書いて押印をすることにより作成する遺言です。(すべてを自筆しなければなりません。一部でもパソコンやタイプライターによるものは無効です。)

(1)メリット

①費用がかからない。
自筆証書遺言は紙とペンがあれば遺すことができます。公正証書遺言のように公証人に手数料を支払う必要はありませんので、費用をかけずに遺言を遺すことができます。
また、費用がかかりませんので、後日遺言を変更したい場合であっても、気軽に新たな遺言を遺すことができます。

②方式が簡便である。
自筆証書遺言は、方式が簡便で、必要最小限の方式(全文が自筆であること、日付の記載があること、署名押印があること)を満たしていれば、遺言として有効となります。
比較的自由な体裁で遺言を遺すことができるのも、自筆証書遺言のメリットといえるでしょう。

③証人をたてる必要が無い。
自筆証書遺言は自筆で遺言を書くだけですから、証人に内容を確認してもらう必要がありません。誰でも証人になれるわけではありませんので、証人二人を用意するのは難しい場合もありますが、身近に証人になってくれそうな人がいない場合でも、自筆証書遺言を遺すことができます。

④遺言の存在と内容を秘密にできる。
自筆証書遺言は、遺言を検認する時まで誰の目にも触れさせないでおくことや、ご自分の最後の意思を秘密にしておくことも可能です。

(2)デメリット

①遺言書が発見されないおそれがある。
遺言の存在と内容を秘密にしておける反面、遺言を残していることが親族等に知られず、せっかく遺しておいた遺言書が見つからないリスクもあります。また、遺言書の存在を伝えていたとしても、保管場所等が分からなかったり、失念したりすることもあるので、自筆証書遺言の場合は、せっかくの遺言が無駄になる可能性が捨て切れません。

②詐欺・脅迫の可能性・紛失・偽造・変造・隠匿などのおそれがある。
自筆証書遺言は一人で作成し、簡単な方式で保存することができますので、遺言をされるとき脅されて書いたり、騙されて書いても、文面からはそのような事情は分かりません。
また作成するときは何の問題もなくても、遺言をした後に偽造されたり変造されるおそれもあります。このように自筆証書遺言には、ご自分の最後の意思が正しく伝わらない危険があります。

③遺言が無効になるおそれがある。
遺言はどの方式をとっても一定の方式をとることが必要です。また、日付や署名など必ず書かなければならない事項もあります。自筆証書遺言では、ご自分で遺言を遺されますので、どのような方式をとらなければならないか、何を書かなければならないかが分からないままに書いてしまう危険もあるのです。方式や記載の仕方の不備があると遺言は無効になってしまいます。
また、たとえ方式や記載事項が正しくても、内容が不明確であったり、解釈の仕方に違いがあったりすると、相続人の間で意見が分かれてしまい、結局争いになってしまうことがあります。

④家庭裁判所の検認が必要
公証人が確認して作成する公正証書遺言と違い、自筆証書遺言は法律上有効に成立したかどうかの確認ができていません。
そこで遺言をされた方が亡くなった後で遺言を確認する際には、遺言が有効なものかどうか、偽造されていないかなどを確認することが必要なります。これを「検認」といい、遺言を発見した人は家庭裁判所で遺言を検認してもらう必要がありますので、遺言内容を確認するまで若干の時間と手間がかかります。

3.公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が証人二人の立会いのもと、公証人の面前で遺言の内容を口授し、それに基づいて公証人が遺言者の真意を正確に文書にまとめ、遺言書として作成するものです。

(1)メリット

①間違った内容は遺さない。
公証人という専門家が関与し、遺言者や証人に確認しますので、遺言を書き間違えたり、形式的に整っていない遺言をするリスクがなくなります。ご自分の意思を正確に遺すことが可能になるのです。

②遺言内容の吟味が可能。
やはり専門家が関与することの効果ですが、遺言を遺す際には、誰にどの財産を与えるかだけではなく、どのように手続きをすすめるかなどを話し合って決めることができますので、実際に遺言内容を行なう際にスムーズに行動することが可能になります。

③偽造を防止することができる。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。公証役場では公証人の管理の下で遺言書が保存されるため、遺言書がなくなったり、書き換えられたり、場合によっては破られたりする危険がありません。

④家庭裁判所の検認が不要
公正証書遺言は作成するときに厳しい手続きを踏んだ上で、公証人が確認するものですので、実際に遺言内容を実行する際には家庭裁判所で遺言書を検認する必要がありません。相続が始まった際には、すぐに遺言書を確認して手続きをすすめられますので相続人の費用や手間が減ります。

⑤難しい文面を考える必要がない。
自分が思っている内容を実際に遺言として遺すことは実は簡単なことではありません。言葉には様々な解釈があることから、曖昧な言葉や表現を使うと、遺言の内容が自分の意思とは違う結果になってしまうこともあります。
公正証書遺言では、遺言の趣旨を伝えることでその趣旨を公証人が文面にしてくれますので、自分の意思に沿った遺言内容を実現しやすくなります。

⑥筆記をできない人でも遺言を遺すことができる。
公正証書遺言は遺言内容を公証人に口頭で伝え、これを公証人が筆記するかたちの遺言です。高齢者の方の中には、病気や身体の衰えなどから筆記がままならない方もいらっしゃいます。ご自分で筆記が難しい方でも公正証書遺言を使うことによって、遺言を遺すことが可能になります。

(2)デメリット

①作成の手続きが面倒である。
公正証書遺言を遺すためには、定められた手続きを踏まなければなりません。手続きを踏んでいないものは公正証書遺言とは扱われません。

②遺言の内容を秘密にしておくことができない。
公正証書遺言は作成するときに、その内容を公証人に伝え、これを証人も確認しなければなりません。つまり、事前に遺言の内容は明らかにしなければならないので、遺言の内容を秘密にしておきたい方には不向きです。

③費用がかかる
公正証書遺言を作成するためには、公証人に支払う報酬など、その他の自筆証書遺言ではかからない費用がかかります。財産が多くなるほど公証人に対する報酬も高額になりますので、場合によっては相当高額な報酬を準備しなくてはなりません。

④証人を用意しなくてはならない。
公正証書遺言を作成するためには、証人二人が必要です。この証人は誰でも良いわけではなく、相続人なる方やその配偶者などの、遺言によって利益を得たり失ったりする人は証人になれませんので、身近に証人になってくれそうな人がいなくて、証人二人を用意するのは難しい場合があります。

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